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FANATEC、創業社長が復活し、CORSAIRの買収がなくなる可能性も|MASK|ブログ|

CORSAIRによる、買収が濃厚と見られていたFANATECブランドを運営しているEndor AGですが、新しいプレスリリースが出されました。株主総会の開催が許可されたとのこと。これにより、解任されていた創業社長が経営に復活する可能性が出てきました。以下、解説していきます。

FANATECとは?

まず、FANATECとは、ドイツの日本人にとっては高級ハンコン(PCやプレステ、XBOXに対応するハンドルコントローラー)のブランドです。そのブランドを運営しているのがEndor AGです。日本のレースゲーマー、SIMレーサーたちの間ではEndor AGより「FANATEC」の響きの方が有名。

Fanatec

エントリーモデルであれば、ステアリング、モーター、ペダルがせセットで6.5万円程度ですが、

CSL DD Ready2Race Bundle for PC (5 Nm)
The CSL DD Ready2Race Bundle for PC (5 Nm) combines the CSL Steering Wheel P1 V2 with the CSL DD and CSL Pedals.

最近の製品だと、2024年2月に、約21万円の以下のセットが発売されています。

・プレステのグランツーリスモ向けにデザインされたステアリングと15Nmの強力なトルクを発生するプレステ対応のモーター(Clubsport DD+)のセット(なお、ペダルは別売り)
モーター単品のClubsport DD+は在庫ありですが、このセット品はなかなか在庫ありにならないですよね。GT DD PROについてもセット品は現在、在庫がないようです。

Gran Turismo® DD Extreme
Gran Turismo® のための最強の公式ダイレクトドライブシステムは、 Polyphony Digital とのパートナーシップにより設計された先進のステアリングホイールと、15NmのClubSport DD+ホイールベースを組み合わ...

・F1のライセンスを得たステアリングと、同じく15Nmの強力なトルクを発生するプレステ対応のモーター(Clubsport DD+)のセット。(これもペダルが別売り)

ClubSport Racing Wheel F1®
ClubSport Racing Wheel F1®は、ユニークなブルーの鍛造カーボン仕上げを施した先進の Formula ステアリングホイールと、15Nmという驚異的なClubSport DD+ホイールベースを組み合わせたものです。

その他、複数のステアリングの選択肢があるメーカーです。

2024年4月には、ユーザー囲い込みのためか、自社製品専用のハンドルコントローラー用のシートを発売しています。

CSL Cockpit
CSL Cockpit は、その重量以上のパンチ力を発揮します。アルミニウムとスチールの構造は、剛性と強度のためにあらゆる部分が最適化されています。

シートについてまとめた記事↓シートや、シフター、モニタの固定金具を同時に買うと10万円超えます。

そのような、製品を製造販売しているEndor AGですが、以下の記事に示すように、2024年3月、旧CEOであるジャックマイヤー氏が融資先の投資銀行の意向で解任され、現在は投資銀行の意向で送り込まれたアンドレ・ラフ氏がCEOとなっています。

現経営陣は、ドイツの法律のStaRUGという制度を使用し、裁判所に認められれば、現在のEndor AG(FANATEC)の株価を0円とし上場廃止になります。その代わりに、現在の負債(投資銀行への借金等)を減らし、体力のある買収先(CORSAIR)から支援を得られるようにする計画です。

会社としては借金が減り、良いことのように思えますが、株価が0になるということは、今まで株を持っていた人たちの権利が奪われることになります。投資として買っていた人は、「残念でした。見る目ありませんでしたね」、と言った程度のものでしょう。

一方、レースのスポンサーに巨額の費用を投じ株価が大きく下がっていたとは言え、FANATECはブランド力は結構大きい。製品は売れており、融資さえあれば会社は回っていたはず。株の大部分を持つ創業社長にとっては、全てを奪われたような気分になるはずです。上場廃止となれば、その株の効力は失われますし、彼が今まで築いてきたものが0円になります。

↑タイトルでもわかるように、この記事では、まだCORSAIRの買収確定ではないよ!とは書いていました。

プレスリリースの内容

このプレスリリースは現在の新経営陣側が作成した文章になりますので、創業社長である旧経営陣の要望で?開催されるであろう臨時株主総会の開催に対して否定的なニュアンスとなっています。

私は別にMBA(経営修士)とか持っていませんし、株式会社の役員でもありません。検索によって、得られた情報をもとに、私の今までの株式投資経験だとか、サラリーマン経験だとかを総動員してまとめたものとなります。

以下が最新のプレスリリースです。(この後に解説を入れているので、その解説だけ見たい方は、このプレスリリース原文は読み飛ばしてください)

ランツフート地方裁判所は、エンドルAGの株主に臨時株主総会の招集を許可した。

ランツフート、2024年7月16日– Endor AG(WKN 549166 / ISIN: DE0005491666)は、ランツフート地方裁判所(Amtsgericht Landshut)がEndor AGの株主2名に臨時株主総会の招集を認可したことを発表しました。裁判所の認可には、以下の議題が含まれています。

エンドルAGの現在の経済状況、およびエンドルAGの(差し迫った)破産の再編/解消に関する提案、議論、交渉、合意の状況に関する経営委員会の報告

  • 年次総会による取締役会メンバーのアンドレス・ルフ、マティアス・コッシュ、ダニエル・メイバーグ、ベルマ・ナダレビッチの信任撤回
  • ドイツ労働法第103条に基づく監査役の解任に関する決議
  • 監査役選任に関する決議
  • エンドルAGの再編に関連して、経営委員会および監査委員会の活動を監査するための特別監査人の任命に関する決議
  • 株主に付与された新株予約権による現金出資による増資の実施に関する決議

取締役会の情報によれば、申請書を提出した株主は、同社の年次株主総会に、7,000万ユーロまでの新株予約権による資本増強を提案する予定である。取締役会の情報によれば、新株は1株当たり1.00ユーロの発行価格で発行される予定である。

当社は、株主が承認を利用し、連邦官報での公告により臨時株主総会を招集するものと想定しています。

Endor AG の取締役会の意見では、臨時株主総会を招集して開催すると、投資家 Corsair の参入により、ドイツ企業安定化・再編法 (StaRUG) に基づく進行中の手続きの一環としての会社の再編が危うくなるとしています。これは、特に監査役会または取締役会の変更、ならびに資本政策により、投資家 Corsair に暫定融資を終了する権利、および/または Corsair と合意した条件書に従って再編を終了する権利が与えられるためです。

進行中のStaRUG手続きが失敗した場合、融資銀行は停止協定を解除する権利も有する。

要求株主は依然、信頼できる資金調達の構想を取締役会に提出していません。取締役会は、予定されている資本増強によって、会社が十分な流動資金を適時に確保できるとは考えていません。

特に、取締役会は、発行額の支払いと引き換えに新株を引き受ける十分な投資家がいるという確かな兆候を持っていません。取締役会の意見では、7,000万ユーロの資本注入でさえ、持続可能な再編には現時点では不十分です。この金額は融資銀行へのローン返済にしか使用できず、Corsairによる暫定融資には使用できず、会社のさらなる流動性要件はカバーされないためです。したがって、この場合、増資が全額実行されたとしても、会社の継続企業の見通しは良好ではありません。

信頼できる借り換え構想がないまま進行中の StaRUG 手続きを終了すれば、同社の破産につながり、同社の存続と雇用が著しく危険にさらされることになる。

同社は新たな流動資金を適時に注入しなければ現在の融資を返済できないため、融資が取り消されるとStaRUG手続きは終了し、同社は破産申請をしなければならなくなる。

同社は、StaRUG 後も再編を継続する予定です。同社は現在、Corsair と貸付銀行が投資家 Corsair との計画された再編を引き続き支援すると想定しています。したがって、Endor AG の取締役会は、現時点では継続企業の見通しが良好であると想定し続けています。

エンドルAGは地元裁判所の判決に対して控訴することを検討している。

Endor は法的要件に従って今後の手続きの進行に関する情報を提供します。

通知者:
マティアス・コッシュ、CFO

https://endor.ag/2024/07/16/landshut-local-court-authorises-shareholders-of-endor-ag-to-convene-an-extraordinary-general-meeting/?lang=en

Endor AG(FANATEC)の株主総会開催の認可について

地方裁判所によって、株主総会の開催が許可されたとのこと。これは旧経営陣のジャックマイヤー氏(家族含む)が現在50%の株式を持っていることから、彼らの要望によるものと考えられます。

下の表は、株式の所有割合を表しています。一番左が旧CEO一族。2番目が監査委員会、3番目がAndras Sesey氏。一番右の41%は浮動株で、個人が大量に持っているわけでは無く、市場で売り買いされている株の割合になります。

Screenshot

Andras Sesey氏は、旧取締役会のメンバーです。以下の昨年のプレスリリースによると、現在の新CEOがEndor AGに招かれCFO(最高財務責任者)になった際に、CFO職を譲り(奪われ?)、顧問になったようです。

エンドルAG:マティアス・コッシュがアンドラス・セムジーの後任として新CFOに就任

ランツフート、2023年9月29日– レーシングシミュレーション用機器の世界的なサプライヤーであるEndor AGは、取締役会の変更を発表しました。2023年11月1日付けで、監査役会はマティアス・コッシュ(1978年生まれ)をEndor AGの取締役会に任命します。2004年から取締役会のメンバーであるアンドラーシュ・セムゼイは、2023年12月31日に期限が切れる契約を更新しません。

〜〜略〜〜

アンドレアス・ポットホフ:「監査役会は、アンドラス・セムジー氏の当社における長年の貢献、エンドルAGへの貢献、そして一貫して良好で信頼できる協力に感謝の意を表します。当社に25年以上貢献してきたセムジー氏が、最長2年間の移行期間中、引き続き顧問として対応できることを嬉しく思います。」

議題1:Endor AG(FANATEC)新経営陣の解任

年次総会による取締役会メンバーのアンドレス・ルフCEO、マティアス・コッシュ、ダニエル・メイバーグ、ベルマ・ナダレビッチの信任撤回です。

ドイツの株主総会については私が検索する限り、役員の選任は出席株主の過半数にて決議されるとの、結果もありました。議題にもよるかと思いますが、もしこれが本当なら、50%の株を持つジャックマイヤー旧CEO側の要求が通り、旧CEOが経営側に返り咲く可能性があります。

なぜ?今になって臨時株主総会?

ジャックマイヤー旧CEOが退任した当時、資金についてはもともと取引があった投資銀行頼りでした。数十億円借金をし、製品を製造・販売して、数億円・数十億円の収入を見込む。みたいな、スリリングな経営をしていたようです。

その投資銀行から「旧CEOを変更しなければ、融資の継続を行わない」と言われ、融資を止められたら、製品も作れなくなり、売り上げがなくなり、借金を返せなくなる=倒産・破産確実。ということで、これを回避するために旧CEOは一時退任をするしかなかった、ということになります。

今、ジャックマイヤー旧CEOは、投資家を見つけられたのだと考えられます。その投資銀行の融資がなくても経営を継続する目処が立ったので、経営権を取り戻すべく、株主総会の招集をかけたのではないでしょうか?

議題2:監査役の解任・新規選任

現在の、現行経営陣側の監査役を解任し、旧経営陣側についてくれる監査役を選任したいということでしょう。

議題3:Endor AG再編時の特別監査人の任命

同じく、現経営陣の影響を排除するために、他の特別監査人を選任したいようです。

議題4:新株予約権を用いた増資

最大7000万ユーロ分=120億円分の株を発行することで、運営資金となる現金を得ようといているようです。その株を購入するのが、旧経営陣が見つけてきた(と想定される)投資家というわけです。

この時、1株あたり1ユーロとして、投資家に渡すことを想定しているとのこと。

株を発行するのではなく、新株予約権なので、投資家に1株1ユーロで渡しつつも、すぐには換金できず、定められた期間が経ってから換金できるようにする構想のようです。

現在2024年7月中旬の株価は大体0.4ユーロ。なので、この増資が成功した場合は、株価は1ユーロに近づいていくと思われます。

Screenshot

その後、うまく会社が回れば、徐々に株価が1ユーロを超え上昇基調になると思います。投資家は将来、この時に購入した最大7000万ユーロ分の株に配当を出すようにしたり、価格が上がった株を売却して利益を得ることを期待するわけです。

今回のプレスリリースを受け、もともと0円になるかと思われていた株に価値が出る可能性が浮上したので、株価は0.2ユーロから0.55ユーロまで約2.5倍上昇し、0.4ユーロ程度に落ち着いています。

現在の経営陣は、株主提案に否定的

裁判所の臨時株主総会の招集の認可に対して、臨時株主総会が開かれると現在の経営陣は退陣となる可能性があります。そのため現経営陣側は以下のようにネガティブに主張しています。

・そもそも、こんな高額な株を購入できる投資家は本当にいるの?
・7000万ユーロを調達しても、FANATECを運営するのには不十分なのでは?
・今、行なっている手続き(StaRUG)を終了したら、投資銀行は融資を中断するため、法的に破産することになるのでは?
・今進んでいるCORSAIRによる買収計画をそのまま行うと、会社が安泰なはず

さらに、この臨時株主総会に対し、地元裁判所の判決に対して控訴することを検討しているとのこと。

FANATEC、買って大丈夫か?

「経営権がどちらに転んだにしろ、FANATECブランドは継続され、色々あったからこそ、供給やサポート体制は改善されていく」という予想はしていますが、依然経営権は決まっておらず、ゴタゴタしています。

遠いドイツで起こっていることなど、私は判断できません。旧CEOが巨額の資金を持つ理解ある投資家を引き連れてきているのであれば、会社存続は安泰でしょう。現経営陣側の計画に基づきCORSAIRがEndor AG(FANATEC)を買収しても、それはそれで安泰でしょう。ただ、このゴタゴタでCORSAIRが、「やっぱやーめた」となり、旧CEO側が連れてきた投資家も実はお金ないみたいな感じだと、FANATECというブランドは消えてしまうかもしれません。

ただこれだけ、両者が本気でこの会社を奪い合っているのを見ると、まだまだこの会社にはお金を生み出す価値があるようです。しかし、リスクもあると思いますので、やはり購入は自己責任で。としか言えないですね。

FANATECは在庫があれば、日本の倉庫から発送されるのですぐ届きます。一方、在庫がなければ「予約注文」(受注生産みたいなもの)という形で、クレジットカード決済はしつつも、その商品の入庫・発送を待つという形になります。在庫ありと在庫なしの商品を同時期に購入したい時は、注文方法は気をつけないといけないので、購入を迷っている人は、この記事あたりを見てもらえたら。

そう言えば、昨年のブラックフライデーで、半年以上もなかなか届かなかった「予約注文」の以下の商品、SNSを見る限り届いたみたいですね。(現在は在庫がないようですが。。。)さすがに、ステアリングが半年来ないなんて想像しないでしょう。なので、予約注文品は、心と時間の余裕がある方のみ注文することをお勧めします。

ClubSport Steering Wheel Formula V2.5 X
Xbox 公式ライセンス取得 ClubSport Steering Wheel Formula V2.5 X は、あらゆるフォーミュラカーやシングルシーター型レースカーに最適なサイズと形状を備えています。

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MASK SIM Racing
2020年、僕はiRacingが気になり、まず約30万円を投入してFANATEC製ハンコン、自作PC、自作SIMコクピットを設置しました。その後僕はいろいろ散財し、今まで少なくとも100万円以上はSIM機材に投入していると思います。このよう...

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